1-8.管理組合として重要なこと

理事会は、大規模修繕工事を進める場合、使うお金の額が大きいのでどうしてもしり込みしてしまう傾向があります。

そして、どうしたら失敗しないかということに気をとられて物事を先に進める際に躊躇してしまい、結局的確な判断をすることができずに、決定が遅くなり、その後のスケジュールがタイトなるのであせってしまったりすることが多々あります。

私は、大規模修繕工事を進めるときの理事会は、どんなことに注意して進めていけばよいかをアドバイスするすることにしています。

キーワードは「合理性」

何が正しいかより、合理的な選択は・・・

  • 多数意見がいつでも正しいとは限りませんが 、多数意見のほうが組合員には受け入れられやすいことも事実です。
  • 細かなことにこだわって「どの選択が正しいのか」を議論するよりは、「多くの組合員が納得してもらえる合理的な選択肢はどれか?」を議論した方が良いと思います。

組合員が納得する合理的なお金の使い方

資金計画や予算を大きく逸脱しない使い方

  • 大規模修繕では、決まりきった修繕以外にもやりたいことが山ほどでてきます。また、総会決議で承認を受けて工事が始まってからでも、多くの希望がでてきて「あれもやりたい、これもやりたい」となる管理組合は結構あります。
  • しかし、大規模修繕工事は決められた予算の範囲で実施しなければなりません。いくら良いことを思いついたとしても予算を無視して実施することはできません。
  • 私は、大規模修繕工事を実施するときには、増減精算の工事項目に備えることと、軽微な変更や追加がでることを予想して「予備費」を工事金額の5%程度計上するように助言します。
  • 理事会には、ある程度の裁量権がないとスムースな大規模修繕工事は進められませんが、予算を無視して進めることはできません。

負担の公平性が確保される使い方

  • 大規模修繕工事の対象となる部位は、原則として共用部分です。例外的に専有部分の工事も含めて実施する場合もありますが、このような場合に「負担の公平性」が問題になる場合があります。
  • 配管の更新(交換)工事を行う際に、専有部分である室内の横引き配管まで、修繕積立金で交換する場合などがそれに当たります。既に自費で交換が済んでいる住戸などから反発の声がでることもありますので、事前の説明会などで「全戸一斉に実施するメリット」や「対象外の住戸への対応」などをきちんと話しておくことが必要です。

組合員が納得する合理的な業者の選び方

公募や競争入札の活用

  • 工事をどの業者に発注するかは多くの組合員の関心事です。
  • 「なぜ、その業者に見積を依頼したか」、「なぜ、その業者に決めたのか」等が説明できる合理的な理由があったほうが組合員は納得します。
  • 私は、多くの場合、新聞による公募や、同一条件による競争入札を勧めます。

特定の個人の関係業者は誤解のもと・・・

  • 特定の個人の紹介業者は、うまく活用すると安くてよい仕事をやってくれる場合もあります。
  • しかし、一歩間違うと金額や仕様の面で管理組合とトラブルになって、紹介した組合員もそのマンションに住みづらくなる場合があります。
  • ですから私は、なるべく個人の関係の業者は使わないように勧めています。

まとめ

  1. 大規模修繕工事は、総会決議の内容と予算に忠実に実行することが大事であり、それを大きく逸脱しそうな場合は、面倒でも臨時総会を開催して承認をもらう。
  2. 管理組合は、大規模修繕工事に際して多くの決定をしなければならない。その時に重要なことは、多くの組合員が納得できる合理的な理由に基づく決定していく必要がある。
  3. 大規模修繕工事は、大きな金額のお金が動くので一歩間違うと誤解や疑念を招くこともある。だから、公平・公明な運営を心がけることが必要。

次は工事業者選定の留意点です。