1-2.大規模修繕工事の意義は

続いて、大規模修繕工事の意義についての説明です。

そんなのわかってる、という方も多いと思いますが、なぜ大規模修繕工事が必要なのか、その意義をきちんと理解した上でやっていなかったりする場合も結構あるのです。ですから、私のマンション管理士事務所では、大規模修繕工事コンサルタントとしてお手伝いする際に、敢えてこういうところからご説明させていただくことがあります。

建物の適正な維持・管理による資産価値の維持
⇒必要な機能の維持及び回復

この場合の「維持・管理」は、日常のメンテナンスではなく「錆びている鉄部の一斉塗装工事」や「屋上の全面防水工事」、「外壁の塗りなおし」などの工事を意味します。又、設備面でいうと給排水管の更新工事などが典型的な例です。

建物や設備は、使わなくても徐々に劣化して行きます。錆びや汚れで汚くなったらみっともないし、生活していても気持ちよくありません。当然にマンションの評判(資産価値)も悪くなります。

ですが、、、マンションの大規模修繕工事はただ建物をきれいな状態に戻すだけが目的ではありません。外壁を覆っている塗装が劣化してきたら、コンクリートの中性化が進行し躯体の傷みが早くなります。

又、コンクリートには時間がたてば必ずひび割れが発生する性質があります。そのひび割れも定期的に補修しておかないと、そこから雨水が入って中の鉄筋が錆びたりしてやはり躯体が長持ちしなくなります。

大規模修繕工事の一つ目の意義は、劣化した建物や設備の機能を初期の状態まで戻すことにより、建物の資産価値と美観を回復することです。(どこのマンションでもそうだと思いますが、大規模修繕工事が終了すると、すっきりして住民の方の気持ちも新しくなり、新たなコミュニケーションが生まれます。)

生活水準の向上、法律の変更に対応したグレードアップ
⇒資産価値の向上

1番目で述べた異議は「機能回復」が主なものです。しかし、大規模修繕工事のもう一つの意義は「グレードアップ」です。

グレードアップといっても漠然としていますが、いろいろな改善工事と思ってください。改善しなければならない理由は、いくつか考えられますが、1つ目の理由は生活水準の向上に対応する必要性で、2つ目の理由は法律の変更などに対応する必要性です。

例えは、オール電化に対応するには最低でも50アンペアの電気容量が必要となります。そのためには既存の電気幹線を太くする工事をしなければならないかもしれません。又、居住者の高齢化が進んで行った場合は、マンション内のバリアフリー工事なども検討する必要がでてくるときもあります。

それから、法律により2011年にはテレビのアナログ放送が終了しますので、いやでも地上波デジタル放送に対応する必要性があります。

つまり時代や法律の変化に対応しながらマンションのグレードを高めて、資産価値を向上させることも大規模修繕工事の意義といえます。

区分所有法第9条も関係している。

今度は、法律絡みの話をします。

時々、明らかに修繕を必要としているマンションなのに、「お金がない。」とか「汚くても自分たちが我慢すればかまわない。」等の理由で、必要な修繕をしないで放置している管理組合を見かけます。

そんなとき、私は「区分所有法」の第9条を引き合いに出して説明します。第9条(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)の条文は「建物の設置または保存の瑕疵が原因で他人に損害を与えた場合、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあると推定する。」となっています。

例えば外壁のタイルが落下して、第三者に被害を与えた場合等は明らかに管理組合の責任ですが、給排水管の破損による水漏れで他人に被害がでた場合、その原因が専有部分か共用部分かはっきりしないときは、共用部分が原因としてやはり管理組合の責任が問われるということです。

必要な修繕を行わないで放置した場合、管理組合に思わぬ責任が発生し、多額の損害賠償を請求されることもあります。こうなったら、汚くても自分たちが我慢すればそれで良いというわけにはいきません。

ですからマンション管理組合は、常に適正な修繕を考えておく必要があり、そのための資金計画等も日頃からたてておくべきです

まとめ

大規模修繕工事の意義

  1. マンション(建物・設備)の機能を回復し、資産価値を維持し、美観を取り戻す。
  2. 社会環境の変化、生活水準の向上、法律の変更などに対応し、資産価値を高め、快適な生活を保障するため。

次は、維持・保全のイメージについてです。